長く続く雨にしっとりと濡れた紫陽花が美しいころ。
梅雨の雨は農作物にはもちろん恵みの雨ですが、じつは海の幸にも大きな影響があります。
今回は梅雨の時期に美味しくなる海の食材について。
皆さんにとっても馴染み深い「鯵」のお話です。

梅雨鯵とは
鯵は一年中スーパーで見かける魚ですが、実は旬があります。
「梅雨鯵」という言葉があるように、鯵は梅雨の時期に脂がのって美味しくなります。
山に降った多くの雨が川に流れ、その川の栄養豊富な水が海へと流れ込みます。そうすると海のプランクトンが増えて、湾内などにいる鯵がたくさん餌を食べることによって、脂ののった味になっていくというわけです。
このように、雨が多く降る季節に鯵がおいしくなるのです。

梅雨は6月だけではない?
ところで、梅雨は6月の頃だけではないということを知っていますか?
気象用語を調べてみると、春と夏の間だけではなく、他の季節と季節の変わり目も「梅雨」という言葉がついた名称で呼ばれてるものがあります。
冬と春との間の雨は「菜種梅雨(なたねつゆ)」、夏と秋との間の、秋雨前線が降らせる雨は「秋霖(しゅうりん)」、そして秋と冬との間の雨は「山茶花梅雨(さざんかつゆ)」と呼ばれます。それぞれの季節の雨を表す言葉の中にも、「梅雨」という言葉が使われています。
「梅雨鯵」は、季節が変わりゆく間に降り続く長雨によって美味しくなる鯵のことだったのです。
ただ、それぞれの梅雨の中でも最も脂がのり、量も獲れるのはこの6月の梅雨の鯵です。今の時期、豊洲で鯵を見てみると、良いものが並んでいて、中には惚れ惚れするようなものもあります。
鯵のおいしい食べ方
鯵の食べ方の一番のおすすめは、なんと言っても「鯵のたたき」です。
鯵やイワシなどの小魚を自分でおろすことができるということは、美味しい瞬間にその魚を食べることができるということです。
鯛などの大きい魚は、切ってサクにしてしばらくおいて熟成させたりしますが、小魚は熟成させるよりも鮮度がいい状態で食べるのが一番美味しいのです。
魚はおろしておいておくと、脂は徐々に酸化していきます。まだおろしていないそのままの魚を買えば、まだ酸化が始まっていないので、自宅でおろして刺身やたたきにすると最も新鮮で美味しい状態の魚を食べられるというわけです。
これが、自分で魚をおろすことの醍醐味です。
いい鯵の見分けかた
いい鯵の見つけるには、脂がのっていて鮮度のいいものを探すことです。
見るべきポイントが3つあります。
1つめは魚の色です。いい鯵は「瀬つき鯵」と言われていて、湾内にいるあじですが、脂が乗っている鯵は全体が黄色味を帯びています。
2つめは魚の幅です。専門用語では「体高」といって、背中側の背びれから腹側までの幅が広いものの方が脂がのっています。
3つめは魚の目です。鮮度がいい鯵は目が澄んでいて、ハリがあります。
私の料理教室で使う鯵は、私が朝の市場で見て選んでいます。市場では同じ箱の中でも幅が広いものや細いものと様々ありますが、それを自分の目で選んで仕入れているのです。
生徒さんはその新鮮な、いい魚を自分の目で見て料理することで、魚を見る目を身につけていくことができます。
近茶流の鯵のたたき
近茶流の鯵のたたきの特徴はピーマンを入れることです。
魚のクセや臭みとピーマンの青臭さが互いに互いをうち消しあう効果があります。そして食材の本当の美味しさだけを楽しめるわけです。
これは私が料理の中で面白いと思っているところです。
料理は味の積み重ねだけではなく、異なる味の特性をもつ食材を使うことによって互いの悪い部分をうち消し合うことでもあるのです。 その効果を使うことによって食材の本来の美味しさが出てきて、それを楽しむことができます。
これは料理の技法の中でもなかなか高度なレベルのものではあります。でもそのような食材の組み合わせを見つけるのも、料理の楽しみの一つになると思います。

皆さんも今の時期、スーパーや市場で並んでいる鯵をじっくり見てみてください。自分の目で選ぶところから、魚を見る目は鍛えられます。美味しい季節の食材との出会いをぜひ楽しんでくださいね。

