味噌の色ってどうして違う?

日本の台所にとって馴染みの存在である味噌。日々の料理で何気なく使っている醸造調味料です。

でも・・疑問に思うことはありませんか?

なぜ、味噌によってこんなに色の違いがあるんだろう?

味噌汁にするとき、使う味噌によって必要な量が違う?

味噌にはどれだけ種類があるのだろう?

今回は、そんな素朴な疑問に答える味噌のお話です。

土地に味噌あり

日本各地には、様々な味噌があります。

たとえば、津軽味噌、仙台味噌、信州味噌、八丁味噌、白味噌など・・。ここで気づくことがありますね。多くの味噌には、地名を冠した名前がついていることです。

地域ごとに多様な味噌が存在するのは、気候や原料、食の好みが土地ごとに違っていたからです。味噌は全国共通の基準で整理されることなく、それぞれの地域で必要とされる形に育ってきました。地域ごとに、独自の製法があって、それぞれに全く違う性質の味噌が作られてきたのです。

味噌は、麹の種類(米、麦、豆)、麹と大豆の割合、塩分量、熟成期間などの要素でおおよその特徴が決まります。

味噌は地域性が非常に強く、種類も多かったため、長らく醤油や酢のように全国共通のJAS規格が設けられていませんでした。しかし、海外輸出の拡大を背景に国内規格の整備が求められ、2022年からJAS規格(日本農林規格)に参加しています。

味噌の色を決める要素とは?

種類によって味噌の色にこれだけ違いがあるのはなぜでしょうか?それは「麹歩合」や醸造期間などによって色が変わるからです。

麹歩合とは味噌の原料である大豆と麹の使用量の比率のことです。たとえば麹歩合が10割の場合、大豆に対して同量の米麹が使われていることを意味します。麹歩合10割の味噌は現在の家庭で日常的に味噌汁などに使われている味噌です。麹歩合が増えるほど、つまり麹の量が増えるほど京白味噌のように淡い色合いとなり、やさしい甘みが前に出てきます。一方、米や麦などの麹を使わず大豆麹のみで仕込む味噌は、色が濃く八丁味噌に代表されるような力強い味わいになります。

勘違いされやすいのは、色が濃い味噌は塩分も高そうだと思われているところです。味噌は色が濃いといって、必ずしも塩分が高いというわけではありません。たとえば八丁味噌は色は濃いですが塩分は特別高いわけではなく、2年間という長期熟成のなかで、うま味と糖分がメイラード反応することで濃い色になります。味噌の色は塩分の違いを表すものではないのです。

醸造期間も味噌によって大きく異なり、色の違いにもつながります。一般的に味噌は1年ほど熟成させることが多いです。それよりも長いものだと八丁味噌のように2年間、短いものでは西京味噌などの白味噌で3週間程度でできてしまいます。醸造期間が長いと色が濃くなり、短いと色の薄い味噌になります。ちなみに買ったばかりの味噌は色が薄くても、長時間おいておくとどの味噌も色が濃くなります。

自分で作ってみると分かりますが、味噌は夏を越えることで色が一段と濃くなります。熟成中の温度も色の濃さに影響します。信州味噌のように薄い色に仕上げたい場合、夏は涼しい山の蔵で熟成させるメーカーもあるほどです。

味噌の種類

最も一般的である麹歩合10割の味噌には信州味噌などがあります。塩分濃度は11%〜12%程度。 熟成期間は約1年間です。

大豆が麹よりも多く使われているものには仙台味噌があります。麹歩合は5〜7割で、色はやや濃く香りが良いです。塩分は約13%とやや高めです。

大豆だけを使い、米麹を使っていないものは八丁味噌。濃い色をしていますが塩分は信州味噌などよりも高くなく、約10%ほど。熟成期間は約2年ととても長いです。

西京味噌などの白味噌は麹歩合20割で、大豆の2倍量の米麹が使われています。塩分は約5−6%程度と低く、長期保存はできず賞味期限は3ヶ月ほどです。

いま挙げた味噌の種類はほんの一部ですが、このように味噌は種類によって塩分濃度や味わいの幅が大きく、さまざまな楽しみ方があります。

味噌汁に入れる味噌の量はどのくらいがいいのか、よく疑問に思われる方がいます。基本的には美味しい味噌汁の塩分濃度は0.9%前後が目安とされます。たとえば塩分の高い仙台味噌の場合は、だしの量に対して味噌を重量比で8〜10%程度、白味噌の場合は20%程度加えることで程よいおいしさとなります。

味噌汁を作るときは、味を見ながら味噌の種類に応じて量を調整することが大切です。使う味噌の甘みや塩分の違いを考慮して、味見をしながら調整するとよいでしょう。

味噌を楽しむには

これだけたくさんの種類があるので、味噌汁以外にも、様々に味噌を使ってみると楽しみが広がります。味噌を使った料理も色々ありますが、その中でも私のおすすめは練り味噌です。

茄子や蒟蒻の田楽などにも使える、基本の練り味噌を紹介します。

小鍋に仙台味噌50g、砂糖45g、酒大さじ1を入れ、火にかける前によく混ぜます。馴染んだら強火で練ります。艶が出て沸いてきたらさらに酒を加え、固さを調整したら完成です。酒の代わりに酢を加えれば酢味噌にもなります。

熱々のご飯にのせるだけでとても美味しいです。炒めた茄子などに合わせてもいいですし、生のきゅうりに添えるとおつまみにもなりますね。冷蔵庫に入れておけば保存もききます。

最後に

普段わたしたちが何気なく使っている味噌ですが、こんなにも多様な顔を持っています。地域ごとにその姿が変わることも、日本の土地の多様性を物語っているようで面白いですね。色々な味噌を試してみて、自分のお気に入りを見つけるのも楽しいかもしれません。

著者

近茶流宗家 柳原料理教室 主宰
博士(醸造学)

東京・赤坂の柳原料理教室で、日本料理、茶懐石の研究指導にあたっている。

NHK大河ドラマなどのテレビ番組の料理監修、時代考証も数々手がける。 2015年文化庁文化交流使、2018年農林水産省日本食普及の親善大使に任命され、世界へ日本料理を広める活動を行う。

ライフワークは江戸時代の食文化の研究と日本料理・日本文化の継承、そして子ども向けの和食料理本の執筆・講義を通した子どもへの食育。

近茶流 柳原料理教室ホームページ
https://www.yanagihara.co.jp