「土瓶蒸し」は秋を代表する料理のひとつです。その始まりは、山で仕事をする人々が土瓶を携えて山に入り、水や酒を入れて持ち歩いていたことに由来するといわれています。山で採れたきのこなどをその酒の中に入れ、土瓶ごと火にかけて食べたものが始まりで、それを後に茶人たちが、現在のような風情ある料理へと仕立てていったとされています。
土瓶蒸しといえば、やはり松茸。松茸はお椀のお吸い物でも楽しめますが、土瓶という器を使うことで、またひと味違った香りと美味しさが生まれます。土瓶の中に出汁を張り、松茸とともに鶏肉や海老、銀杏などを入れ、酒を加えて火にかけます。土瓶の中に香りが閉じ込められることで、蓋付きのお椀とはまた違う、豊かな香りを楽しむことができます。
「土瓶蒸し」という名前から、土瓶ごと蒸して作ると思われることもありますが、私は土瓶を直接火にかけます。そうすることで、酒や松茸の香りが立ち、その香りを土瓶の中に閉じ込めることができます。
ここで土瓶蒸しの美味しいいただき方について。
土瓶の蓋の上には被せるように小さなお猪口がついています。まずそのお猪口に汁を注ぎ、お酒をいただくように少しずつ汁を味わいます。そして土瓶の中の具をつまみながら、またお猪口で汁をいただく。こうした食べ方もお椀でいただくお吸い物とは異なる趣です。カボスなどを添えておいて、その果汁を絞りながら味を変えて楽しむのもいいですね。
松茸と合わせる具材によって、味わいが変わるのも土瓶蒸しの楽しみです。鱧や鶏肉、穴子などを松茸と一緒に入れれば、それぞれに異なる美味しさを楽しむことができます。
松茸の香りと温かな出汁をゆっくりと味わう土瓶蒸し。ぜひ秋の夜長に、お酒とともに楽しんでみてください。

