茄子は、日本人が大好きな野菜のひとつです。「茄子紺」と呼ばれる深い紫色は、ほかの野菜にはなかなか見られない美しい色。この色合いもまた、茄子のご馳走のひとつです。
日本では古くから食べられてきたこともあり、茄子は各地でさまざまな品種が栽培されています。九州では細長い長茄子、京都では丸い形をした丸茄子や賀茂茄子。ほかにも千両茄子など、細長いものから丸く大きなものまで、実に多彩です。
これほど多くの種類の茄子があるのも、日本ならではかもしれません。海外では、日本でいう「米茄子」のような大ぶりのものが主流です。私が海外で印象に残っているのはブラジルで、そこでは日本のような小ぶりの茄子も育てられていました。日系人の方々が日本から種を持ってきたのだそうです。
茄子を料理するときの大切なポイントは、美しい茄子紺をいかに保つかということです。茄子の紫色はアントシアニン系の色素によるもので、とても不安定。そこで相性がいいのが、高温の油です。一度油に通して火を入れることで色が安定し、さらに茄子が油を吸うことで、コクや旨みも引き出されます。
私たちの料理では、この性質を生かして、一度茄子を揚げてから煮る「揚げ煮」という方法をよく使います。また、茄子の色素は鉄と反応すると安定しやすいため、皮目に包丁で細かく切り目を入れることも、美しい色を保つためのひと工夫です。
そして、煮るときにも注意が必要です。落とし蓋や蓋はせず、少し大きめの鍋に煮汁を1〜2センチほど張って茄子を並べます。切り口から煮汁を染み込ませながら、紫色の皮の部分はなるべく煮汁につけないようにする。こうすることで、味を含ませながら皮の美しい色を残すことができます。
そうして仕上げた茄子の揚げ煮には、おろし生姜やあさつきなどを添えていただきます。油を含んだ茄子のとろりとした食感に、薬味の爽やかさがよく合い、とても美味しい一品になります。
これから秋に向けて、茄子はさらに美味しくなっていきます。秋の味覚のひとつとして、ぜひ美しい色合いとともに味わっていただきたい食材です。

