9月ーなす【茄子】

茄子は、日本人が大好きな野菜のひとつです。「茄子紺」と呼ばれる深い紫色は、ほかの野菜にはなかなか見られない美しい色。この色合いもまた、茄子のご馳走のひとつです。

日本では古くから食べられてきたこともあり、茄子は各地でさまざまな品種が栽培されています。九州では細長い長茄子、京都では丸い形をした丸茄子や賀茂茄子。ほかにも千両茄子など、細長いものから丸く大きなものまで、実に多彩です。

これほど多くの種類の茄子があるのも、日本ならではかもしれません。海外では、日本でいう「米茄子」のような大ぶりのものが主流です。私が海外で印象に残っているのはブラジルで、そこでは日本のような小ぶりの茄子も育てられていました。日系人の方々が日本から種を持ってきたのだそうです。

茄子を料理するときの大切なポイントは、美しい茄子紺をいかに保つかということです。茄子の紫色はアントシアニン系の色素によるもので、とても不安定。そこで相性がいいのが、高温の油です。一度油に通して火を入れることで色が安定し、さらに茄子が油を吸うことで、コクや旨みも引き出されます。

私たちの料理では、この性質を生かして、一度茄子を揚げてから煮る「揚げ煮」という方法をよく使います。また、茄子の色素は鉄と反応すると安定しやすいため、皮目に包丁で細かく切り目を入れることも、美しい色を保つためのひと工夫です。

そして、煮るときにも注意が必要です。落とし蓋や蓋はせず、少し大きめの鍋に煮汁を1〜2センチほど張って茄子を並べます。切り口から煮汁を染み込ませながら、紫色の皮の部分はなるべく煮汁につけないようにする。こうすることで、味を含ませながら皮の美しい色を残すことができます。

そうして仕上げた茄子の揚げ煮には、おろし生姜やあさつきなどを添えていただきます。油を含んだ茄子のとろりとした食感に、薬味の爽やかさがよく合い、とても美味しい一品になります。

これから秋に向けて、茄子はさらに美味しくなっていきます。秋の味覚のひとつとして、ぜひ美しい色合いとともに味わっていただきたい食材です。

著者

近茶流宗家 柳原料理教室 主宰
博士(醸造学)

東京・赤坂の柳原料理教室で、日本料理、茶懐石の研究指導にあたっている。

NHK大河ドラマなどのテレビ番組の料理監修、時代考証も数々手がける。 2015年文化庁文化交流使、2018年農林水産省日本食普及の親善大使に任命され、世界へ日本料理を広める活動を行う。

ライフワークは江戸時代の食文化の研究と日本料理・日本文化の継承、そして子ども向けの和食料理本の執筆・講義を通した子どもへの食育。

近茶流 柳原料理教室ホームページ
https://www.yanagihara.co.jp