10月ーくり【栗】

小さいころ、栗拾いをしたことを今でも覚えています。

あのときの栗は山栗だったのでしょうか。小さく、いがに包まれ、手で触ると痛いので、靴でいがを広げながら拾ったものです。

大人になってから、丹波の栗山を歩いた際にも収穫を手伝ったことがあります。そのとき聞いた話では、栗は一種類だけでは実をつけず、二種類以上の異なる品種を植える必要があるらしい。その組み合わせには「相性」があり、例えば、早生種と晩生種をうまく組み合わせて色々試すそうです。

栗の食べ方で私がいちばん好きなのは、手軽に楽しめる栗ご飯です。

栗をむいて、小さなさいの目に切り、研いだ米と一緒に炊くだけ。炊くときにみりんを大さじ1ほど加えると、栗の甘みがいっそう引きちます。黒ごま塩をふっていただくその一膳を口にするたびに、丹波の栗山の風景をよみがえらせてくれる秋の滋味です。

著者

近茶流宗家 柳原料理教室 主宰
博士(醸造学)

東京・赤坂の柳原料理教室で、日本料理、茶懐石の研究指導にあたっている。

NHK大河ドラマなどのテレビ番組の料理監修、時代考証も数々手がける。 2015年文化庁文化交流使、2018年農林水産省日本食普及の親善大使に任命され、世界へ日本料理を広める活動を行う。

ライフワークは江戸時代の食文化の研究と日本料理・日本文化の継承、そして子ども向けの和食料理本の執筆・講義を通した子どもへの食育。

近茶流 柳原料理教室ホームページ
https://www.yanagihara.co.jp