蛤は二枚貝の代表的なもので、その形や色が栗に似ていることから「浜ぐり」と呼ばれるようになったといいます。
おもに内湾の浅い砂地を好み、江戸時代から三重の桑名や江戸前のものが有名です。現在では千葉の九十九里なども名産地となっています。
二枚貝は左右の殻が丈夫な靭帯で結ばれ、二つの筋肉である貝柱の力で閉じられています。開けるときは、「ハマムキ」という道具を使って貝柱を切って開けます。市場が豊洲に移る前までは、築地市場の貝を売る店の奥には必ず「貝むきの姐さん方」がいました。その名人芸は目にも止まらぬスピードで貝をむき身にしていきます。ひもや外套膜(蛤の身を包む薄い皮)に傷をつけてしまうと、煮蛤にした時に縮んでしまって綺麗には仕上がりません。上手くなるとむき手指名で注文が入るほどの職人技を持つ人もいたそうです。
貝をむいて売る文化は江戸時代からのようです。とくに江戸では蛤やあさりはむき身にして売られていました。今も残る江戸の郷土料理である深川飯は、この貝をむいて売る技術があったからこそ生まれた料理です。ちなみに浮世絵にも残る桑名での食べ方は、松笠(まつぼっくり)を燃やして蛤を殻ごと焼く焼蛤です。蛤の汁をたっぷり含んだ味を楽しんだようです。
蛤の殻は二つ対になっているため「貝合わせ」という遊びが生まれたり、夫婦和合の象徴とされてきました。その意味で、祝儀の料理にも使われます。
蛤の料理は、殻つきの場合はそのまま汐汁(うしお)にしたり、焼蛤などにします。蛤を焼くにはあらかじめ靭帯を切っておくと貝の蓋が開かないのでひっくり返ることなく、煮汁がもったいなくならずにすみます。むき身にしたものは鍋や釜飯に入れると美味しいですし、時雨煮や寿司だねとしても使えます。
2月の研修科(2年目のクラス)のお稽古では、蛤の汐汁をつくります。3月の上巳の節供でつくりたい料理ですね。

