1月ーふきのとう【蕗の薹】

フキノトウは、山菜の中でもひときわ早く春を告げる存在です。まだ地面の冷たさが残る頃、時には雪を押しのけるように顔を出す姿は、冬から春への移ろいを静かにに伝えてくれます。フキノトウはフキの花茎の部分であり、花が終われば葉が伸び、やがて私たちが知る「フキ」へと姿を変えていきます。その一瞬の姿を味わうことこそ、季節を食べるという日本料理の醍醐味でしょう。

フキノトウの強い苦味やアクは、芽吹きの時期に動物に食べられないための自然の理です。昔から「春の味には苦味を盛れ」と言われてきたように、春の食材は、ただ食べやすくするのではなく、季節の力強さである「えぐみ」を少し舌に残すことも大切です。この苦味をどう生かすかが料理人の腕の見せどころです。アクを抜きすぎれば春らしさは消え、残しすぎれば食べにくい。その加減が、日本料理ならではの感覚です。

下処理については、フキノトウの場合、ただ湯がくだけでは十分にアクは抜けません。湯に少量の重曹を加えることで、色よく仕上がり、アクも穏やかになります。その後、水に晒し、煮浸しなどに仕立てると、春らしいほろ苦さを残した一品になります。一方で、最も手早くアクを和らげる方法は油を使うこと。油は苦味を包み込み、香りとして立ち上げてくれます。

料理として、まずおすすめなのは天ぷらです。衣と油がフキノトウのアクを包んでくれることで、えぐみを感じずに春の苦味を楽しむことができます。もう一つはふきとう味噌。刻んだフキノトウを油で炒め、味噌、砂糖、酒を加えて練り上げる。熱々のご飯に乗せると、フキノトウの春らしい香りが口の中に広がります。1月の料理教室のお稽古ではふきのとう味噌を作ります。

ぜひ、一足早い春の滋味を楽しんでください。

著者

近茶流宗家 柳原料理教室 主宰
博士(醸造学)

東京・赤坂の柳原料理教室で、日本料理、茶懐石の研究指導にあたっている。

NHK大河ドラマなどのテレビ番組の料理監修、時代考証も数々手がける。 2015年文化庁文化交流使、2018年農林水産省日本食普及の親善大使に任命され、世界へ日本料理を広める活動を行う。

ライフワークは江戸時代の食文化の研究と日本料理・日本文化の継承、そして子ども向けの和食料理本の執筆・講義を通した子どもへの食育。

近茶流 柳原料理教室ホームページ
https://www.yanagihara.co.jp