以前、あるうなぎ屋で、ご飯の美味しさに驚いたことがあります。
もちろん、うなぎ屋にはうなぎを食べに行ったのですが、そのとき強く印象に残ったのがご飯でした。「銀シャリ」という言葉がぴったりの、つやつやと輝くご飯。食感も歯ごたえもよく、ご飯だけでも十分に味わえるほどの美味しさでした。
毎日のように食べているご飯だからこそ、それだけで人を感動させるというのは、すごいことです。
美味しいご飯がおかずを引き立てる。日本料理を学ぶうえで、ご飯を美味しく炊くことは、とても大切な基本なのです。
ご飯を炊くことは「煮炊き」の基本
私の料理教室では、ご飯の炊き方や出汁のひき方、計量の仕方など、料理の基本をくりかえしお伝えしています。その中でも、まず知ってもらいたいことのひとつが、「米の研ぎ方」です。
祖父の柳原敏雄も、「ご飯を炊くことは煮炊きの一番の基本」と話していました。その教えを受け継ぎ、今でも料理教室では羽釜でご飯を炊き、炊いている間の米の変化を見ながら学ぶことを大切にしています。
あるうなぎ屋には、ご飯を炊くことを専門にする「飯炊きさん」がいることもあります。
米そのものを吟味し、炊き方にも細心の注意を払う。それほど、ご飯は料理の味を左右する大切な存在なのです。
品種だけでなく、米そのものを見る
古くから、日本人は米の質や収穫量を向上させるために、米の品種改良に力を入れていました。多くの人が好む食感をもったコシヒカリ(農林100号)を代表に各地で色々な品種が作られています。
以前は、生産量を上げるために、冷寒地でも多い収穫が出来る品種など開発が進んでいましたが、現在は温暖化の影響もあり、高温に強い品種の開発が進んでいます。
多くの美味しい品種がありますが、米の品質も味に大きく影響します。
米の状態は、実際に研いでみるとよくわかります。研いでいる途中で割れやすかったり、粉がたくさん出たりする米もあります。一方、状態のよい米は、研いでも粒の形がしっかりとしていて、ひび割れも少ないものです。
とはいえ、袋に入った米を買うときに、一粒一粒の状態を確かめることはできません。だからこそ、まずは信頼できる店やメーカーの米を選ぶことも大切です。
そして、買った後の保存にも気を配りたいものです。米は時間が経って乾燥すると、ひび割れなどの原因になることがあります。米が乾燥してしまわないような容器に入れて保存し、長く置かず、できるだけ早めに使い切るようにしましょう。
日々、米を扱いながら、その一粒一粒を見ることも、美味しいご飯への第一歩です。
なぜ米は「洗う」ではなく「研ぐ」のか
日本では、米を「洗う」ではなく「研ぐ」といいます。
現在は昔に比べて精米技術がよくなり、米に残るぬかも少なくなったため、以前ほど強く研ぐ必要はありません。それでも、私は米を研ぐことは大切だと考えています。
ぬかは、精米された米を乾燥などから守る役割もしています。一方、家庭では精米したての米をすぐに炊けるとは限りません。時間が経つとぬかも酸化していくため、炊く前に研いで落としてあげます。そうすることで、ご飯も白くきれいに、そして美味しく炊き上がります。
米は力を入れすぎずに研ぐ
研ぐときは、まず米を水でさっと洗い、水気を切ります。その後、少し深さのあるボウルなどに入れて研いでいきます。浅いボウルよりも深さがあって底が平らになっているものの方が、米と米をすり合わせやすくなります。
ここで大切なのは、力を入れすぎないことです。強く研ぐと米が割れやすくなるため、米の状態を見ながらやさしく研ぎます。
研ぎ終わったらザルなどにあけて水気を切り、すぐに炊く場合は水につけておきます。
普通の白いご飯であれば、水加減は米の容量に対して2割増しがひとつの目安です。たとえば米が2カップ、400ccであれば、水は480ccほど。この増やした分の水を米が吸うため、実際に炊き始める頃には、米と水がおよそ同量になります。このとき、水を吸った米は白く色が変わります。
美味しいご飯を炊くことは、日本料理の基本。まずは丁寧に研ぐところから始めてみてください。
そして、研いだ米をどう炊けば美味しいご飯になるのか。羽釜や鍋で炊くときの火加減や炊き上がりの見極めなど、ご飯の炊き方についても、また今後の記事でご紹介していきたいと思います。

